僕と吃音との距離。④
中学生。
期待と不安に胸を膨らませ、大人に1歩近づく時期。
この時期の僕も、吃音と一緒だった。
でもまだ、「吃音」という言葉を知らなかった。
中学生活最初のイベント、入学式。
そこで、新たなトラウマを作った。
新入生は、一人ひとり名前を呼ばれ、返事をしなければいけないという。
1人ずつスムーズに進んでいく。
少しずつ僕の番が近づいていく。
僕の心臓はずっと激しいままだった。
僕はクラスで、出席番号1番だった。
なので、最初に呼ばれる。
そのうち名前が呼ばれた、、、、、。
声が出なかった。
2文字。
常人にはあまりにも簡単すぎたことが出来なかった。
会場が少しどよめく。
結局、10秒程かかってしまった。
僕には何倍も長い時間に感じた。
教室に戻ってから、質問やからかいの連続だった。
中学から初めましての人もいたから無理もない。
でも、辛かった。
苦しかった。
失意のうちに、中学生活1日目を終えた。
家に帰ると、入学式に来ていた両親に心配された。
「いるはずの、自分の息子がいないと思った。」と。
今思えば、ここで悩みを相談できたかもしれない。
でも、言えなかった。
「声が出なかった。」なんて、言えなかった。
少し憂鬱な幕開けで、僕の中学生活は始まった。
𓃠続く𓃠